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真境名 育恵

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2025年「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を

沖縄の伝統的な家庭において、仏壇は重要な意味を持ちます。特に「仏壇持ち家」と呼ばれる家は、代々家族の信仰と伝統を守り継いできた大切な存在です。一般的に長男が住む家に仏壇が置かれ、その家の女性(ウフヤーアンマー)が年中行事を取り仕切る重要な役割を担います。

筆者は、仏壇持ち家で生まれ育ち、結婚後も同じく仏壇持ち家に嫁いでいます。このコラムでは、幼少期から体験してきた沖縄独自の伝統行事について、現代の視点を交えながら紹介していきます。今回のテーマは「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」です。

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を

目次

沖縄の「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」とは?

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」は、家族を守る屋敷を守ってくださる神様に感謝し、屋敷内のさまざまな場所を拝み、家族の健康や繁栄を願う儀式です。
沖縄では「土地は神様からお借りしている」と考えられていて家には屋敷の神がおり、節々にはお礼と家族の繁栄と安全、周囲との円満を祈ります。

拝む場所は、台所のヒヌカン(台所に祀る火の神様)、屋敷の四隅、門、屋敷の中心部にあるナカジン(屋敷の中心、中陣をつかさどる神)の合計7か所を拝みます。このほか、床の間、仏壇、井戸、トイレ、屋敷の神を祀る祠があれば、こちらも拝みます。
屋敷の四隅と門は、屋敷内から外側に向かって拝みます。
四隅は、「北→東→南→西」の順に拝み、ナカジンは玄関先などの戸外から建物に向かい、屋敷の中心を目がけるように拝みます。

2025年の「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?

2025年の屋敷御願はいつやるのでしょうか?
多くの場合、旧暦の2月と8月の年に二回、または12月を加えた年に三回行いますが、2月は春の彼岸、8月は秋の彼岸までに拝みを済ませるようにします。
2月の御願は1月~6月までの上半期のため御願となっており、旧暦2/1~2/10頃(新暦:2/28(金)~3/9(日)頃)までの間に日取りを決めて行います。

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」に必要な御願セット

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を
※写真は一例です。

屋敷御願(ヤシチヌウガン)の基本的なお供え物は、酒(泡盛を入れた徳利2本、盃を1個)、ハナグミ(生米を小皿に入れたもの)、ウチャヌク(もち粉で作った白もちを3段重ねたもの)か、まんじゅうなどのお菓子で、一つのお盆にのせます。
箱型のビンシー(簡易拝み箱)があるご家庭では、酒とハナグミ(生米を小皿に入れたもの)を入れたビンシー(簡易拝み箱)をお盆にのせて使う場合もあります。

お供え物一式とは別に、拝む場所の数の分、ヒラウコー(黒い板状の線香)とシルカビ(書道用の半紙を切って折ったもの)を用意します。ヒラウコーは、沖縄の伝統的なお線香で、日本線香の6本分を縦にくっつけたようなお線香です。シルカビは、神様へのお金です。
ヒラウコー12本(2本)とヒラウコー3本(ヒラウコー1/2)を、シルカビ1組(3枚)の上にのせたものが1セットで、これを一か所に1セットずつ供えるのがスタンダードですが、一か所につき3セットずつお供えするご家庭も多いようです。

ちなみに私の実家は、3セットお供えしていました。
さらに別のお盆に果物(バナナ、りんご、みかん等)、重箱料理、塩、ウチカビを供えるご家庭もあります。ウチカビは、沖縄のスーパー等で売られている黄色い半紙の束で、あの世のお金です。

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」のグイス(拝み方)

沖縄旧盆_ウートートー

〇手順
お供え物をひとつの盆に盛り、ヒヌカン(火の神)から始めます。
まず、線香に火をつけて、次のような御願をし、これから屋敷の御願をするあいさつをします。

〇屋敷御願のグイス(拝み方)
「サリ、アートートー、ウートートー。」(住所、干支、名前を告げる)
今日の良き日に屋敷の拝みをいたします。
十二本と三本の線香と洗い清めたお米とお酒、塩をお供えいたしまして〇〇家の男と妻の〇〇のお願いを申し上げます。
天の神様、地の神様、北の神様、東の神様、南の神様、西の神様、ご門の神様、床の神様、中央の神様、便所の神様、いつもこの屋敷をお守りくださいまして、ありがとうございます。どうぞ、これからもこの屋敷に魔物、病魔、他人の災いが来ませんようにお守りください。

神様からたくさんの徳がありますよう、今年一年上半期、神々の光でこの家屋敷をお守りください。言葉の不足や失礼は未熟者ですのでお見逃しください。
サリ、アートートー、ウートートー。」

我が家の「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」の思い出

生家での屋敷御願は、当時のウフヤーアンマーだった祖母が、年三回、家族の健康祈願をしてくれていました。
孫の私や、現在のウフヤーアンマーである母は主にお供えものを準備して、ビンシー(簡易拝み箱)をもって、拝みをする祖母に付き添っていました。
家の拝みといっても、侮ってはいけません。

生家はさほど大きな家ではありませんが、家の7か所(台所のヒヌカン、屋敷の四隅、門、屋敷の中心部にあるナカジン)を拝む際、家族全員の名前と生まれ年(干支)を述べて、家族全員の無事息災を願う儀式は一日がかりで行われました。
御願の言葉で印象に残っているのが、祖母の「ヨソカジ、ウムカジ、ウシヌケテくださいますよう、お願い致します。」という言葉です。

これは「この屋敷の四隅、ナカジン、門を固くお守りいただき、悪い風、汚れた風は、屋敷の外に押しのけてください。」という意味だったのですが、祖母がこの言葉に特に力をこめて御願を行うことで、まるで我が家にヤナマジムン(人間に悪さをする霊や妖怪など)が入ってこない結界を張っているような気持ちになったものです。

言霊という言葉があるくらいですから、実際に結界が張られていたかも知れません。

「屋敷御願(ヤシチヌウガン)」はいつ?何をすべき?屋敷の神様に感謝し家族の健康や繁栄を

一方、嫁ぎ先の場合は屋敷御願の際には知人のユタ(民間信仰における巫女)に依頼をして、拝みをやってもらっています。
一日がかりの拝みごとを年に数回行うというのは、それはもう体力勝負!!!
私の嫁ぎ先は家族全員が働いており、ウフヤーアンマーである姑も80歳を超えて拝み自体が体力的に厳しく一人で行うことが出来ないというのがユタに拝みを依頼する理由です。
家族の健康や一家の繁栄を願って行う屋敷御願を継続するために、親族の年配者にご指導を仰いだり、年中行事のマニュアルを読んで拝みを行う方たちも多くいるようです。

私がウフヤーアンマーを継承する日が来たら、家族の健康祈願をする屋敷御願では定期的に我が家に「結界を張る気合い」で御願をしたいと思います。
今回は「屋敷御願」についてお届けしました。

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