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「自ら成長できる」選手を。就任1年で琉球ゴールデンキングスU15を初の全国準Vに導いた末広朋也HC…主導する改革と“世界基準”の指導論
173cmのNBA選手「河村勇輝」に見る世界基準の選手像

中には、U15の年代でここまで高い水準のメンタリティを求めることに「厳しい」と感じる人もいるかもしれない。しかし、Bリーグは「世界に通用する選手やチームの輩出」をスローガンの一つに掲げており、各チームのユースもこの目的を共有している。国内トップクラスの選手たちと長らく接してきた末広氏は、この年代で既に将来性の違いが出ることを実感してきたという。
代表例に挙げるのが、身長173cmという小柄ながら、日本人史上4人目のNBAプレーヤーとなった河村勇輝である。
河村がU16日本代表の選考を兼ねた強化合宿に招集された時のことだ。
「彼のディフェンスのやり方が怠けて見えて、僕が『こういう風にやらないと、今後生き残っていけないよ』と改善を促したことがあります。人間は誰しも弱さがあるから、すぐに習慣化することは簡単ではありません。しかし、河村は僕が言った翌日から、求めた基準を一度も下回ることがありませんでした。彼は今でも、相手の技を盗んですぐに自分のものにすることを強みにしていますが、あの吸収力、謙虚さは素晴らしいの一言に尽きます」
末広氏は「僕はコーチではなく、戦術分析のスタッフだったので、まともに聞く耳を持たないという反応でもおかしくはないですよね」とも言った。確かに、それもうなづける。学生の段階で世代別日本代表に選ばれる程の力があれば、ややもすると、井の中の蛙になってしまっても不思議はない。しかし、河村にはそういった傲慢さは皆無だったという。
常に基準を「世界」に置き、自らに妥協を許さない河村はその後、BリーグでルーキーイヤーにレギュラーシーズンMVPを獲得し、日本代表エースの地位を固めてW杯やパリ五輪で世界を驚かせた。そして、23歳にして世界最高峰リーグNBAの重たい扉をこじ開けた。
決して体格的に恵まれた訳ではない河村が辿った道筋は、学生の頃から備えていた優れた人間性が、自らのキャリアを切り開く上でいかに重要な要素だったかを体現していた。だからこそ、末広氏は「ああいうプレーヤーとの触れ合いがあったからこそ、育成したい選手像は明確に見えています。選手たちには河村のような人間性を求め、それを基準に接しています」と語る。
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