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「自ら成長できる」選手を。就任1年で琉球ゴールデンキングスU15を初の全国準Vに導いた末広朋也HC…主導する改革と“世界基準”の指導論
「競争環境」の導入と人間性の向上に注力

末広氏は名古屋D U15に5年間在籍した後、2023年にキングストップチームのサポートコーチに就任。2024年の年明けからは本格的にキングスU15の指揮を執り始めた。活躍の場を移した最大の理由は、旧知の仲であるトップチームの桶谷大HCの存在だったという。
「桶さんはbjリーグ時代にキングスを強くし、いろんなチームを巡った後、またキングスに戻って結果を残しています。シンプルに、どういった部分がすごいのかを身近で見てみたいという好奇心がありました。そこから学べることがあるだろうし、桶さんが率いるトップチームで活躍する選手を育てたいというモチベーションも湧いてきました」
まず取り組んだことは競争環境の整備だった。
所属選手をそれまでの約2倍となる44人に増やし、練習はAチームとBチームに分けた。主に公式戦に出場するAチームに入れるのは全体の3分の1ほど。プレーの質や日々の練習に取り組む姿勢などを評価基準に、頻繁に選手を入れ替える。
競争を促すことは、この年代ならではの理由がある。
「以前のキングスU15は、トライアウトに合格した限られた人数を育成していました。U18やU22であれば、その手法でも良いとは思いますが、ミニバスを卒業する段階のトライアウトでは、まだ将来性が見えない子も多くいます。だからこそ、競争も含めて選手たちが『もっと頑張りたい』と思える環境を作る必要があると考え、人数を増やしました」
人間性の向上も重視するポイントの一つだ。「タイトルを目指すことと、それに見合った人間性を育てることをセットで取り組まないと、大人になった時に社会で必要とされるような人材を育成することはできません」と強調する。
週に1回、コートでの練習がない日に実施する「オンラインプラクティス」では、選手たちの内面にさまざまなことを訴え掛ける。日々の習慣や著名なスポーツ選手の生き方などをテーマに、一人ひとりが意見を出し合う。
ある日の回では、以下のような事を伝えた。
「みんなキングスU15を卒業する日が来るけど、その時に後輩からどういうメッセージを読まれたいかを想像してみてほしい。『身長が高かった』『バッシュが格好良かった』などの表面的な評価がいいのか、『辞めそうになった時に先輩のおかげで頑張れる力をもらった』『先輩の挨拶がすごく気持ち良かった』とか、真似をしたいと思ってもらえる人でいたいのか。そのイメージは、今をどう生きるかにつながってくるからね」
自らを客観的に見て、どういう人間でありたいか。そして、将来的にどういう人間になっていきたいのか。第三者的な思考や計画性は、選手がキャリアを積み重ねていく上でも重要だと考える。
「例えば、今後選手たちが代表チームのメンバーを決めるトライアウトに参加するとします。呼ばれた時点で、それぞれにシュートやパス、リバウンドなどの強みがある事はコーチも分かっています。であれば、コーチ達は仲間の好プレーを称えたり、一番早くコートに来て準備をしたりする人間性をプラスアルファで評価しますよね。その期間、どうすれば選考されるかを考えて過ごせるかどうかは、とても大事なことです。そこで人生が変わるかもしれないので」
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