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「自ら成長できる」選手を。就任1年で琉球ゴールデンキングスU15を初の全国準Vに導いた末広朋也HC…主導する改革と“世界基準”の指導論
3〜4カ月で方針転換…練習メニューに工夫を

2018年に日本協会を退職後、指導に専念できる環境が整っていた名古屋D U15のHCに就任。満を辞してコーチの道へ足を踏み出した。
しかし、初めから順風満帆とはいかなかった。「日本の各カテゴリーで結果を残しているコーチたちの下でテクニカルスタッフを務め、世界中のバスケを見てきました。知識が豊富になり、いわゆる『頭でっかち』な状態でのスタートでした」と振り返る。
選手の動きや振る舞いをじっくりと観察する現在の姿とは真逆だが、当初は練習中に「よく喋っていた」という。いろいろな局面における相手ディフェンスの突破の仕方、その反対の守り方、1対1で重視する部分。あらゆる知識を言葉で伝えた。しかし3〜4カ月が経過した頃、ある事にふと気が付いた。
「選手が上手くなっていない…」
どう戦えば勝利に近付けるか、どんな選手になれば世界でも戦えるか。これまでの経験から、自身の中での答えはある。ただ、それらが選手に伝わり、個々の成長につながらなければ意味がない。
現状を打破するため、すぐに行動に移した。学校の夏休み期間を利用し、全国で実績を挙げている中学、高校年代のコーチたちを訪ね歩いた。すると、日々の練習において「ある程度、精度は大雑把でもいいから、運動量のあるメニューをこなす」という共通部分が見えてきた。
「ミニバスや中学生年代の選手たちはまだ経験が浅いので、コーチが多くを喋って伝えるよりも、体を動かしながら頭の使い方を身に付けていった方が超一流の選手が育つ可能性が高い。そういう結論に至りました」
それ以降は、伝えたいメッセージのほとんどは練習メニュー自体に込めるように工夫した。開始前に話す注意点は二つ、三つのみ。取り組んでいる間はほぼ喋らず、その練習で何が求められているかを自分で考えさせる。次に同じメニューをする時は、前回足りなかった部分を伝え、改善するためにまた考えさせる。
自ら考える“余白”を作ったことで、試行錯誤しながら課題を乗り越えていける選手が少しずつ増えていった。考える習慣が身に付けば、コート上で選手同士が会話することも増え、試合中のアジャスト能力も当然向上していく。結果、名古屋D U15はトーナメント形式でBリーグU15ユースチームの頂点を決めるチャンピオンシップで3連覇という好成績を残した。
当時、名古屋D U15で主力の一人だった今西優斗(高校3年)は現在、名古屋D U18でキャプテンを務め、ユース育成特別枠でトップチームにも帯同する。昨年11〜12月に行われたU18チャンピオンシップでもチームを初優勝に導き、自身は大会MVPに輝いた。
昨年12月に沖縄アリーナでキングスU18と試合を行った際、U15時代の振り返りを聞くと、今西は「末広さんから『自分のカテゴリーを超えて活躍することに意味がある』と言われ、常に『上へ』ということを意識しています。特にキャプテンをさせてもらった中学3年の時は、コート内外で責任感を持つことも含め、自分が変わるきっかけになりました。得たものが多い3年間でした」と感謝を口にした。
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