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長嶺 真輝

長嶺 真輝

琉球ゴールデンキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜 イタリア人と、ボンゴレ、紅芋タルト、欧州バスケ・・・

キングス取材で印象に残った場面も…

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
岸本隆一選手が長距離の3Pを決め、興奮する地元の子どもたち

キングス取材で印象に残った場面も紹介したい。

キングスは現地時間の8日にトラパニ・シャーク、9日にトラパニと同じくセリエAに所属するデルトナ・バスケットと対戦した。会場は市街地の端にあるパラ・シャークアリーナだった。

一つ目の印象的なシーンは、デルトナ戦でゴール裏にいた現地の男の子たちのリアクションである。筆者は真横でカメラを構えていた。セリエAでトラパニのライバルとなるチームと対戦していることもあり、どうもキングスを応援しているようだった。特に岸本選手が代名詞である長距離3Pシュートを決めた際は、立ち上がったり、頭を抱えたりしてはしゃいでいた。岸本選手も目に入っていたのだろう。コート上から子どもたちに笑顔で何かを話し掛ける場面もあった。

もう一つは、この試合の終了直後だ。キングスは2戦2敗で日程を終えたが、会場からは自然と拍手が湧き起こった。中には、立ち上がって手を叩く人の姿も。選手たちが並んで頭を下げ、コートを後にするまでそれは続いた。極東に位置する日本から長時間を掛けてトラパニを訪れ、コンディション調整が難しい中でトーナメントに挑んだキングスに対する敬意の表れだったのだろう。

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
デルトナ・バスケット戦の後、キングスに拍手を送る地元の観客

最後の場面について、岸本選手は試合後、にこやかな表情でこう振り返った。

「すごくうれしかったです。誠意を持ってプレーすることで、バスケットボールを通して伝わるものが必ずあるんだなということを再認識できた試合になりました」

音楽や芸術などと同様に、スポーツも国境や言語、民族の違いを超えて交流を深める上で大きな役割を果たす。それを象徴する出来事だった。

ただ、目を背けたくなる話ではあるが、バスケットボール界ではアジア人、アジア系の選手に対する差別が根強く残っている。世界的に見ればまだまだレベルの低い地域であり、見た目でアジア系と区別されやすいことも理由なのだろう。しかし、岸本選手の超絶3Pを目の当たりにした子どもたちが条件反射的に興奮を露わにしたように、コート上の選手を評価する上で人種や肌の色は関係ない。

近年、世界最高峰の米NBAで八村塁選手や渡邊雄太選手が定着し、アカツキジャパンもオリンピックに出場して着実に存在感が高まってきている日本バスケ。今回のキングスのようなクラブ単位での海外遠征も、少しでも差別をなくす一助になってほしいものだ。

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
試合に勝った後、客席のファンと応援歌を歌うパルチザン・ベオグラードの選手たち(動画から切り抜き)

最後は個人的な話になってしまうが、試合後の記者会見では相手チームのヘッドコーチに日本バスケの印象を聞いたりもしたが、そのような機会は普段なかなか得られない。

トーナメントに参加したヨーロッパ屈指の名門クラブであるセルビアのパルチザン・ベオグラードの選手たちは試合後、サッカーのように客席のファンと共に応援歌を歌って勝利を祝っていた。同じ競技でも、場所が違えば文化も異なる。それを間近で見て、感じられたこともスポーツライターとして貴重な経験だった。

今後も沖縄という一つの地域に密着しながら、できるだけ日本、そして世界の動きも注視していきたい。キングスという球団、そして日本バスケ全体が急速に発展する中、視野を広げることが日々の取材や記事の深みにも生きてくるのではないか。そう信じたい。学びと刺激の多い取材旅だった。

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
帰りのローマ空港でやっと食べられたピザ。モチモチ、カリカリで美味しかった

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