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長嶺 真輝

長嶺 真輝

琉球ゴールデンキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜 イタリア人と、ボンゴレ、紅芋タルト、欧州バスケ・・・

旧市街に並ぶ古代の建築物と美しいビーチ

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
トラパニの旧市街に鎮座する壮麗な大聖堂

ホテルのオーナーの親切心にあふれた長話がひと段落し、建物2階の4畳半ほどの部屋に案内してくれた。一刻も早くシャワーを浴びて脇汗の臭いから解放されたかったが、まだ部屋の清掃が終わっていなかった。荷物を置き、Tシャツだけ着替えて街へ出た。

正午を目前に日差しが強い。たちまち体中から汗が吹き出してくる。島ぞうりを持参するのを忘れたことを後悔し、9ユーロ(約1400円)のサンダルを買った。

徒歩10分ほどで海岸沿いの道に突き当たった。美しいビーチが延々と続く。家族連れが水遊びをしたり、老婆が書籍に読みふけったりして、多くの観光客が海水浴を楽しんでいた。景色を眺めながら散歩している人も多い。海側に突き出た展望台から見渡すと、道路に面して薄茶色の建物が並び、奥には角張った岩山も見える。テレビや雑誌で見たことがある地中海の海辺の景色と重なった。

そのまま観光の中心地となっている旧市街へ足を向けた。ホテルのオーナーが食事エリアとして勧めてくれた場所である。壮麗な大聖堂などヨーロッパらしい古代の石造建築を横目に、通路に置かれたテーブルで観光客がパスタやピザ、ワインを味わっていた。なんとも優雅である。

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
古代の石造建築を横目に、通り沿いで食事をする人たち

貧乏旅行ではあったが、「一度くらいは」と、決死の思いで帰国前日にこの通りで昼食をしてみた。6テーブルほどの小ぢんまりした店に腰を落ち着けた。メニュー表を見ると「vongola」とある。あさりを使ったボンゴレ系のパスタが好きなこともあり、注文した。
 
お皿が出てきて、唸った。

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜

色使いがいい。太めの麺の上に素揚げしたパセリとズッキーニ、輪切りのドライオレンジ、粒状に砕いたナッツがふんだんに乗っている。少し濃いめの味付けだが、あさりの旨みが凝縮していて味わい深い。モチモチの麺とサクサクの素揚げ野菜、カリカリのナッツの歯応えもおもしろい。残りのオイルもパンに染み込ませ、きれいに完食した。

パスタとパン4切れで19ユーロ(約3,000円)。円安を加味すれば、観光地としては妥当な値段だろうか。何より、味とボリュームの満足感が大きかった。

その日の夜にあったキングスの最終戦後のインタビューで、岸本隆一選手に「パスタ食べましたか?」と聞くと、「(パスタは)6回くらい食べました。むしろパスタしか食べてないです(笑)。とっても美味しいですね」と言っていた。激しく同意した。

ちなみに、現地の物価はそこまで高くない印象だ。1時間半ほどの長距離バスは9.6ユーロ(約1500円)。中心地から少し離れた場所にある「SISA」(色使いは「ホットスパー」。キャラクターは「ゴーヤーマン」みたい)という沖縄から持ってきたようなスーパーマーケットでは、カリカリの小ぶりなパンが大量に入った袋が2ユーロ(約320円)未満。飲み水に至っては、日本で言う500ml入りペットボトルが安い商品で0.3ユーロ(約50円)だった。

琉球ゴールデンキングスキングスを追い掛けて 〜シチリア島・取材旅行記〜
市街地の外れにあったスーパーマーケット「SISA」

少し話が逸れてしまったが、中世には地中海における貿易の中心地として栄えたトラパニは、今も漁業が盛ん。南側にある港には多くの漁船が係留されていた。マグロを中心に豊かな海産物が獲れるという。ホテルの物知りオーナーも言っていたが、多彩な魚料理が自慢だそう。食す機会がなかったのは残念だ。

現地滞在日数が4日間で、ほぼ取材と締切ギリギリの原稿の執筆に追われていた筆者のシチリア島・トラパニの旅の思い出はこのくらいである。旅行で行ったわけではないが、せっかくだからもう少し巡ってみたかったのが正直なところだ。

シチリア島の面積は沖縄本島の20倍ほど。地中海の要所に位置することから、古代からさまざまな民族に支配された歴史があり「文明の十字路」とも称される。古代ギリシャ建築の遺跡群や
バロック様式の街並みなど、各地に世界遺産も点在する。映画「ゴッドファーザー」のロケ地も見られるとか。

というわけで、「よほどの理由」がなくても再訪したい。今後は旅行で。

皆様もぜひシチリア島、そしてトラパニへ。「あのホテル」に当たれば、物知りでお喋りなオーナーがなんでも教えてくれますよ。

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