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長嶺 真輝

長嶺 真輝

「自分を取り戻す」戦いに挑む琉球ゴールデンキングス『伊藤達哉 #3』名古屋D時代の“葛藤”を乗り越えるシーズンに

「なんだこの人たちは…」沖縄で受けた“衝撃”も移籍理由に

琉球ゴールデンキングス「#3 伊藤達哉」インタビュー
キングスに加入後、ファンの前で初めて挨拶する伊藤=9月17日、沖縄アリーナ

新天地にキングスを選んだ理由も明確だ。京都に所属していた若手時代のエピソードも交えて説明する。

「僕のキングスに対する第一印象は沖縄市体育館がホームだった頃で、アウェー戦で来た時に『なんだこの人たちは…』って衝撃を受けたんです。一つのルーズボールやリバウンド、ブロックショットとかで会場がすごい湧く。これまで所属したチームのホーム戦で、ここまでの雰囲気はありませんでした。僕はエナジー溢れるディフェンスが持ち味なので、キングスに合っているんじゃないかと思って移籍を決めました」

沖縄アリーナも含め、アウェーチームとして戦っていても「自分が持っている以上の力が出る雰囲気」を感じていたという。

今月17日、18日の両日にはB2の福井ブローウィンズとプレシーズンゲームを行い、移籍してから初めてホーム戦でコートに立った。2試合目の後、沖縄アリーナの声援を受けた時の気持ちを問われ、「間違いなく燃えますね。あれがあるからこそ(シュートやスティールで)もう1本、もう2本が出る。今まで以上の力が出るところだと思います」と語った。歓声が味方となり、改めて心強さを感じたようだ。

スピードを生かしたプレーやディフェンス面はもちろんのこと、昨シーズンは影を潜めたスコアすることへの貪欲さは大きなテーマだ。「ヘルプが寄ってくるからこそ、よりまわりを生かすことにもつながってくる」と原点を見つめる。

ハドルを呼び掛けるなど、コート上で積極的にコミュニケーションを取ることも魅力の一つ。

新キャプテンの一人に就任した小野寺祥太と同級生で、日本人選手では岸本隆一に次いで年齢が上なことから、「(荒川)颯や脇(真大)、(植松)義也はまだまだ潜在能力があるし、今シーズンは彼らが試合を通してどんどん成長する必要がある。僕もいろんな経験をしてきたので、伝えられることは伝えていきたいです」とメンターとしての役割も自認している。

キャリアを通して怪我との戦いは常に隣り合わせだったが、キングスでは全てのアウェー戦が飛行機移動となり、東アジアスーパーリーグ(EASL)での海外試合もあるためコンディション管理がより重要となる。「体のケアは今まで以上に気を遣うようになりました」と、自身に合ったケアを取り入れるなどしてパフォーマンス維持に努めているという。

目標は、個人としてはまだ見ぬ頂だ。
 
「沖縄にいる全ての皆さんがタイトルに飢えていると思います。地区優勝がまず一番目の目標で、CSをホームで開催する。そして、その先にあるBリーグ優勝。もちろん簡単なことではないですけど、そこを目指して頑張りたいですね」

今年で30歳の節目を迎える伊藤。葛藤を乗り越え、伸び伸びとしたプレーで再び輝きを取り戻すためのチャレンジのシーズンがもう少しで幕を開ける。ただ、その兆候は既に現れているようにも見える。プレシーズンゲームを7試合戦った現段階での評価でしかないが、昨シーズンに比べ、コート上での笑顔が目立つと感じているのは筆者だけだろうか。

琉球ゴールデンキングス「#3 伊藤達哉」インタビュー
時折、冗談も交えながら穏やかな表情でインタビューに応じた
琉球ゴールデンキングス「#3 伊藤達哉」インタビュー
沖縄アリーナのコートで笑みを浮かべる伊藤達哉=23日
琉球ゴールデンキングス

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