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長嶺 真輝

長嶺 真輝

【パリ五輪】「渡邉飛勇&吉井裕鷹」の成長がバスケ日本代表をさらなる高みへ 8強入りが懸かるブラジル戦の鍵は…

【パリ五輪】「渡邉飛勇&吉井裕鷹」の成長がバスケ日本代表をさらなる高みへ
フランス戦で相手のレイアップをブロックする渡邉飛勇=7月31日(日本時間)、フランス©fiba.basketball

こんな時代が来るとは—。

7月31日(日本時間)に行われたパリ五輪男子バスケットボールの日本(FIBAランキング26位)対フランス(同9位)を観て、そう感じた人は多かったはずだ。

結果は90ー94。延長にもつれる大接戦の末に敗れたが、第4クオーター(Q)残り16秒の時点で4点をリードし、金星に限りなく近付いた。開催国を相手にした完全アウェーにも関わらず、である。

今大会、世界トップの12カ国が集うオリンピックに日本が自力で出場したのは、実に48年ぶり。長い、長いトンネルの中を彷徨っていたバスケ後進国が、米NBAでプレーする猛者が多く、3年前の東京五輪で銀メダルを獲得したフランスを追い込んだのだ。

昨年8〜9月に沖縄アリーナなどで行われたFIBAワールドカップ(W杯)で日本がフィンランド(現在のFIBAランキング20位)に対して逆転勝ちを収めたが、W杯で白星を挙げること自体が17年ぶりで、欧州勢からの勝利は史上初という快挙だった。

あれから、まだ1年も経っていない。日本男子のレベルがいかに急速に上がっているか、ということを世界中に知らしめた一戦だった。

第4Q、八村塁の退場後に逆転 示された「層の厚さ」

【パリ五輪】「渡邉飛勇&吉井裕鷹」の成長がバスケ日本代表をさらなる高みへ
持ち前の爆発力で得点を量産した河村勇輝©fiba.basketball

フランス戦では、29得点、7リバウンド、6アシストという圧巻のスタッツを記録したPG河村勇輝、24得点を挙げ、222cmのフランスのエース、ビクター・ウェンバンヤマを1対1で守ったPF八村塁、40分前後の出場時間で攻守に安定した活躍を見せたSF渡邊雄太とC/PFジョシュ・ホーキンソンなど、主力がしっかりと役割を果たした。

ただ、それだけで接戦に持ち込めるほど世界最高峰の一角は甘くない。

しかも、70ー72でビハインドを背負っていた第4Q残り8分31秒、エースの八村がこの試合2回目のアンスポーツマンライクファウルで退場となり、勝負所の時間帯で不在だった。得点力、リバウンド、ディフェンス…。全ての面で戦力が落ちると思われたが、“Xファクター”(主力以外で活躍する選手)が現れた。

身長207cmのC渡邉飛勇である。

八村が去ると同時にコートイン。すると、河村が外した3Pをタップで押し込んだり、試合時間残り1分半の緊張感MAXの場面で216cmのNBAセンターであるルディ・ゴベアのボースハンドダンクを左手一本でブロックしたり。スクリーナー、リバウンダーとして安定したプレーを貫き、18分36秒の出場で4得点、6リバウンド、2ブロックを記録した。

インサイドの攻防において八村、渡邊雄太、ホーキンソンへの負担が大きい中、渡邉飛勇のスタッツに刻まれた「18分」は極めて大きな価値がある。体のぶつかり合いに対しての笛が重い国際大会で、主力のビッグマンを休ませられる控え選手の存在は価値が大きい。

【パリ五輪】「渡邉飛勇&吉井裕鷹」の成長がバスケ日本代表をさらなる高みへ
ドイツ戦で相手のシュートを叩き落とす吉井裕鷹(91番)©fiba.basketball

オリンピックの舞台で、世界レベルでも通用することを証明している選手がもう1人いる。ここまでの2戦でいずれも30分前後出場している196cmのSF吉井裕鷹だ。

フランス戦ではゴベアからオフェンスファウルを誘ったり、10年以上NBAでプレーするエバン・フォーニエに密着マークを仕掛けたりと、体の強さを生かした持ち味のディフェンスでチームに貢献。ドイツ戦では10得点、6リバウンド、2アシストとオフェンス面でも存在感を発揮した。W杯の頃からプレータイムは安定しているが、数字の面での貢献も目立ち始めている。

3年前の東京五輪は八村と渡邊雄太の力が突出していたが、1年前のW杯ではさらに河村、ホーキンソン、富永啓生、比江島慎らが活躍。そして、今回のパリ五輪ではいずれもサイズのある渡邉飛勇と吉井がより計算できる選手になったことで、層の厚さが格段に増した。

世界の高さやフィジカルの強さに長らく屈してきた日本代表にとって、この2人の成長がチームをさらに一段階上のレベルに押し上げていることは間違いない

ブラジル戦

【パリ五輪】「渡邉飛勇&吉井裕鷹」の成長がバスケ日本代表をさらなる高みへ
フランス戦、3Pを決めたジョシュ・ホーキンソンを笑顔で迎える日本メンバー©fiba.basketball

8月2月午後6時(日本時間)からは、予選リーグ最後の試合となるブラジル(FIBAランキング12位)との試合に挑む。2戦2敗同士の対戦となり、日本が今大会の目標であるベスト8進出を果たすためには、勝利が最低条件となる。

決勝トーナメントのベスト8には、A、B、Cの各グループの2位以上と、各3位の中の上位2チームが進出する。つまり、日本はブラジルに勝利してグループBの3位となり、他のグループの3位チームを得失点差で上回る必要がある。

ブラジルの平均身長は196cmほどで、200cm超のドイツ、フランスに比べると高さはない。193.7cmの日本とほぼ変わらないサイズ感だ。

プレースタイルも日本と似ている印象。高さこそないが、個々の身体能力が高く、素早いトランジションからスコアを狙う。3Pを連発して得点を量産する爆発力も備えており、Bリーグのアルバルク東京に所属するレオナルド・メインデルらは要警戒だ。

勝利の鍵はディフェンスとリバウンドだろう。

高い位置からプレッシャーを掛けて3Pの確率を落とさせ、確実にリバウンドを抑えて相手を波に乗せないことが必要になる。オフェンスでは積極的にペイントエリアを攻めながら、生命線である3Pをドイツ戦の35%、フランス戦の43%と同程度を維持したい。

お互いに走るチームで目まぐるしく攻守が入れ替わる展開が予想されるため、体力面を考えるとより多くの選手でローテーションできるのが理想だ。この記事で触れた渡邉飛勇と吉井のほか、富樫勇樹や比江島、ジェイコブス晶、馬場雄大らもより存在感を高めたいところだ。

フランス戦後、日本バスケットボール協会の発表でトム・ホーバスHCは「私たちの目標はまだ終わってません。ブラジル戦で勝利を目指します」とコメント。河村も「個人の力でチームを勝たせることが出来なかったのでまだまだ成長しなければと感じています。次のブラジル戦ではこのフランス戦での経験を糧にして必ずベスト8という目標を達成したいと思います」と力強く言った。

1972年のミュンヘン五輪以来、実に52年ぶりとなるオリンピックでの白星(1976年のモントリオール五輪の1勝は不戦勝)を掴み、史上初の8強入りを果たせるか。個々が成長し、世界トップの国と堂々と渡り合える程の力を身に付けた今のアカツキジャパンであれば、新たな歴史の扉を開く可能性は十分にある。

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