公開日
真栄城 潤一

真栄城 潤一

一杯で味わう至高の調和「NAGISA Okinawan ramen.(ナギサ オキナワン ラーメン)」(与那原町)

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
上特製醤油(1,610円)

いま、沖縄でラーメンが活況をみせている。これまで長らく、味くーたー(味濃いめ)な豚骨ベースのスープが県内では主流だったが、ここ数年は醤油ベースのクリアかつ繊細な味わいの一杯を提供する店が増加の一途をたどっている。

そのほかにも、塩や担々麺、そしてまぜそばなど、それぞれの味で個性を放つ人気店も登場している。
当然、豚骨だろうと醤油だろうと塩だろうと味噌だろうと担々麺だろうとまぜそばだろうと、ラーメンに貴賤はない。

この連載では、1年間で約200杯を啜るOTVの“ラーメン大好き古川さん”の案内のもと、多様化する沖縄ラーメンの魅力を深掘りし、未だ味わっていない人たちには新たなおいしいめぐり逢いを、そしてすでに味わっている常連客にはおいしい再発見を届けていきたい。

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
ラーメン大好き古川さん
古川さんコメント

沖縄本島南部の人気店といえば「NAGISA」。
昼営業で臨時休業も多いために、食べられるだけで幸せを感じます。
うま味調味料や添加物を一切使用せず、県産鶏にこだわったスープ、全国各地の醤油を組み合わせたかえし、自家製麺と店主のこだわりが詰まった一杯にはファンが多い。
スープの一滴まで味わいたいブレないラーメンです。
こだわりの卵を使用した卵かけごはんも一緒にどうぞ。

目次

「トッピングも調味料も、すべてがスープの味を構成するんです」

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
香ばしさを確保しつつ低温調理されたチャーシューは、香りと旨みが段違い

■トッピング

いわゆる“全部のせ”の上特製をオーダーすると、数種類のチャーシューにワンタン、ほうれん草、そして煮卵がのる。
「当たり前のことをちゃんと細かくていねいにすること」と話す大湾さんの信念は、具材一つひとつに行き渡っている。

「チャーシューの低温調理は、火を入れないとどうしても臭みが出る。だから、タレに漬け込んで火をとおすだけではなくて、ネギと一緒に強めのオーブンで焦げ目がつくぐらいしっかり焼いて香ばしさを出しています。ほうれん草も茹でるだけではなくて、カツオと昆布のダシと薄口醤油、みりんで八方ダシを作ってしっかりとつけてます。このほうれん草や、チャーシューの脂の旨みがスープに溶け込むことも見越して、それぞれの具材の味付けや調理をしています。」

NAGISA Okinawa ramen._与那原町

緻密に構築されたスープの多層性

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
こだわり抜いたスープは複雑で多層的な味わい

■スープ

NAGISAの驚くべき特徴のひとつは、スープの多層性にある。
時間経過による温度変化やトッピングとの相互作用も考え抜き、その上で全体の味の「調和」を成立させるバランスで緻密かつ繊細に構築する。

「スープには、材料をたくさん入れ込んでいます。中華そばと醤油ラーメンの共通の鶏スープがあって、中華は本枯節やいりこ、あごなどの魚のダシを合わせます。醤油の方は少し魚ダシを入れますが、ほぼ鶏で少し豚のダシも合わせています。魚ダシ用の素材を種類多めに使うのは、ひとつに絞ってしまうとその素材の状態がよくなければ全部ダメになってしまうからです。クオリティが下がるリスクを減らすために、色んな素材でバランスを整えています。だからスープの味は変わるんですが、それでもちゃんと“おいしく変わる”ように調整しているんですよ。」

麺を啜れば小麦の香りが抜けてゆく

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
スープに合わせて粉の配合や太さ、加水の度合いなどの調整を重ねた自家製麺

■麺

自家製の麺はスープに応じて変え、さらに日々のコンディションに合わせてグラム1桁単位で微調整しているという。
複雑でしっかりとした味わいのスープのなかでも、小麦のよい香りが埋もれずに際立ってわかるのが、NAGISAの麺の大きな特徴だ。

「自家製麺のメリットは、何といっても粉をグラム単位で調整して、いろいろとコントロールできることですね。加水の具合や、中力粉の配合量なども考えて柔らかさも微調整できます。あとは、寝かせる日数でも全然状態が変わってきて、醤油のスープにはでき立てがよいけど、たまに限定でやる生姜醤油の太麺は3日寝かしたコシがベスト、みたいに状態が日に日に変わります。」

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
NAGISA Okinawa ramen._与那原町

■店内、駐車場など

席は厨房に面したカウンター5席、2人テーブル席×1、4人テーブル席×2。食券機で食券を購入してオーダーするシステムだ。

店は平日でもならぶ確率が高く、休日であれば開店前から行列ができることもあるので、そのことも想定に入れておくといいだろう。
駐車場は店舗周囲に6台分が確保されている。

〆にかえて〜私はどう食べたか〜

NAGISA Okinawa ramen._与那原町

NAGISAに入店するとすぐ、先制攻撃的に出汁の香りが鼻をくすぐる。微かだけれど、幾多に重なった豊かな膨らみを感じる、空腹を刺激する芳香だ。

不動の人気の「醤油ラーメン」は、まろやかで穏やかな味わいの生(なま)醤油を使っており、レンゲでひと口流し込むとガツンとパンチある醤油の香ばしさと風味が強く前面に出てくるものの、それでいてしっかりと奥行きを感じるバランスになっている。強くて繊細という、ある意味で最強スペック。
そして、麺を啜ると醤油に加えて鶏と豚によって動物性の旨味の“厚さ”を感じられるように構成されたスープの風味は鼻に抜け、何なら脳天まで到達し、その味わいを存分に感じることができる。もちろん、麺自体の小麦の香ばしさもその中にある。箸が止まらなくなることは必至である。

一心不乱に麺とスープを口に運んでいると、時間が経つにつれて麺のデンプンやチャーシューの脂がスープに溶け出し、味わいはほのかな甘味を帯びながらあたかもとどまらぬ川の流れのように刻々と変化する。その渦中で齧る味玉の、爽やかに香る柚がアクセントになって心地よい。
NAGISAのラーメンはこうした時間的変遷も織り込み済みで緻密に設計されているので、スープの温度が下がっていっても味わいが決して平板にはならない。初めてこの感覚を味わった時、冗談抜きで感動したことを覚えている。気がついたら丼の底が見えるまで、ひと口ごとに唸りながら手を動かすことになるだろう。

NAGISA2本柱の醤油じゃない方・上特製中華そば(1,610円)は、香り高い魚介のダシを存分に味わえる。実は店主のイチ推しはコチラ

そしてその感覚を最も端的に味わえるのが、メニューのもうひとつの柱である「中華そば」なのである(筆者個人的には中華そばが好きだし、店主もコチラ推し)。
鶏をベースに、多種類の素材を使った魚介出汁は、醤油とは全く違った方向性で味と香りの繊細なブ厚さを有しており、なおかつそこに複雑性も加わる。醤油のような分かりやすいパンチがあるわけではなく、ともすれば地味とすら思ってしまいそうだが、そのひと口ひと口で感じる味の奥行きは全くもって侮れない。

…と、この後いくらでも書き続けられそうだが、キリが無い上に抽象的な戯れになってしまうのでここらで留めておきたいと思う。

ともあれ、NAGISAの食券機を一瞥すると感じるかもしれないラーメンとしてはやや高めの価格は、上述してきたような厳選された素材と一杯を構成する要素の隅々までクオリティコントロールを行き届けるための手間ひまをかけたゆえのもので、きちんと美味いものを食べるための相応の対価なのである。
とにもかくにも先ずは一度、先ずはひと口、こだわり抜いた末に生み出される“至高の調和”を味わってほしい。

Information

NAGISA Okinawa ramen._与那原町
NAGISA Okinawan ramen.
住所
〒901-1303
沖縄県島尻郡与那原町与那原3853
営業時間
11時〜15時30分(L.O.14時30分、売り切れ次第終了)
定休日
月曜日・金曜日
駐車場
あり(6台)
クレジットカード・電子マネーの利用
不可
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