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琉球ゴールデンキングス、悔しい準優勝も“カルチャー”はぶれず。岸本が口にした「まくとぅ…」の精神貫く
アルバルク東京戦で“風”が吹く 岸本「顔を下げるような結果じゃない」

しかし、全体順位が上のA東京とぶつかった準々決勝で“風”が吹く。
ダブルオーバータイムの死闘となった第1戦、2度目の延長の試合時間残り9秒で岸本隆一が逆転のスリーポイントシュート(3P)を決めて劇的な勝利を飾った。CSに入ってからチーム全体のディフェンス強度が目に見えて向上し、最大の武器であるインサイドの強みを強調する戦い方も改善して2勝1敗で下剋上を達成。第3戦で今村佳太が右足首を負傷したものの、千葉Jとの準決勝もホーム・沖縄アリーナの大声援を背に2勝1敗で勝ち上がり、ファイナルへの切符を掴んだ。
桶谷HCは、A東京とのシリーズが転機になったと見る。
「CSに入ってからみんなが我慢強くなり、一体感を持ってプレーしようとしてくれたから、A東京や千葉Jにも勝てたと思います。昨シーズンは(RS終盤の)島根戦に勝った時に『風が変わった』という話をしましたが、今回はA東京との第3戦で勝った時に隆一が『風が吹いてきましたよ』って言ってくれて、それが僕の中で自信になったし、『このチーム最後までできるんじゃないか』って思えました」
CSに入り、本来の強さを取り戻したキングス。ただ、ファイナルでは鉄壁のディフェンスを武器とする広島の前に屈した。勝てば優勝が決まる第2戦以降は、自分たちのミスから流れを失う場面も散見された。
連覇の難しさについて問われた岸本は「シーズン序盤から、昨シーズンのチャンピオンを倒しに来るという姿勢で各チームが向かってきました。毎回、それを跳ね返すことができたり、逆に受身になってしまったりすることもあり、大変なシーズンだったと思います」と振り返る。桶谷HCも普段はあまり口にしない「プレッシャー」について言及した。
「実際、1試合目を勝った後の2試合目はプレッシャーがめちゃくちゃありました。2戦目の後半途中ぐらいから過度のプレッシャーを感じてバスケットをしてしまった。今シーズンは『勝たないといけない』という空気がシーズン中もありましたし、最後の決勝も肌で感じました。そういう雰囲気を打破できなかったし、僕も選手たちにそういう声掛けをしきれませんでした」
2人の言葉からも分かるように、昨シーズンの王者であることは自分たちだけでなく、キングスと対戦する相手チームのメンタルにも影響を与えるため、当然連覇の難しさはあったのだろう。ただ、その“包囲網”をくぐり抜けて最終決戦の地に辿り着いたからこそ、岸本は充実感ものぞかせた。
「今シーズンは綺麗な終わり方はできなかったですけど、これはこれで、顔を下げるような結果ではないし、そんなシーズンでもなかったと思います。胸を張って、これからも前向いてバスケットをできたらと思います」
もちろんチームにとっても、ファンにとっても優勝をするのに越したことはない。ただ、全24チームのうち16チームは5月初旬にシーズンを終え、CSに進出する8強のうちの7チームは必ず黒星で最後を迎える。Bリーグのレベルが年々向上し、連覇のハードルも高さを増している。だからこそ、桶谷HCも岸本と同様にチームを誇る。
「この負けで否定されるシーズンではなかったと思います。本当に厳しいシーズンで、西地区も1位を取れなかった。でも、こうやって決勝まで来られたことは誇るべきこと。プロスポーツの世界でファイナルに行き続けるのはそんなに簡単な話じゃない。こういう経験ができたことは、必ずプラスになると思います」
誠意を持ってプレーした先の「なんくるないさ」

キングスの偉業は3シーズン連続のファイナル進出だけではない。Bリーグが発足して以降、これまで行われた7度のCS(2019-20シーズンはコロナ禍でCS中止)に全て進出し、これはキングスと千葉Jの2チームのみ。さらに6大会連続で準決勝に駒を進めており、こちらはリーグの最長記録だ。
これまでの全8シーズンを合わせれば、キングスのファンは最も長い期間、Bリーグを楽しんでいるのかもしれない。
冒頭で触れた通り、この「毎年優勝争いに絡むチーム作り」はキングスのカルチャーと言える。ただ桶谷HCも言った通り、当然簡単なことではない。毎シーズン選手は入れ替わるし、他チームの状況も変化する。直近2シーズンに限って見ても、いずれも王者を輩出した西地区は昨季は4チーム、今季は3チームがCSに進出しており、リーグ創設以来の傾向だった“東高西低”の勢力図を塗り替えている。
リーグ全体の進化、変遷の中でここまで強さを維持できる要因は何なのか。もちろんクラブ経営の順調さやフロントの能力も影響しているだろうが、来シーズンで生え抜き13年目に入る岸本の言葉にそのヒントがあるように思える。
ファイナルの前日記者会見に出席した岸本は、全国ネットのテレビ局から「方言で意気込みをお願いします」との依頼を受け、照れくさそうな表情を浮かべて少し悩んだ後、この“うちなーぐち”を選んだ。
「まくとぅそーけー、なんくるないさ」
丁寧に意味も説明した。
「誠意を持ってやり続けた先に、きっと何かに繋がるとか、なんとかなるという意味です。今浮かんだのはその言葉です」
楽観的な意味で捉えられがちな「なんくるないさー」だが、岸本が言ったように、本来は「まくとぅそーけー(=正しい行い、誠のことをしていれば)」と一緒に使われる。「人事を尽くして天命を待つ」ということわざに近い。
ファイナルの最終第3戦後、シーズンの振り返りを聞かれた岸本はこうも言った。
「勝負の世界なので、どんなに内容がひどくても勝って前に進んだような気になることもあるし、どんなに内容が伴っていても、負けてしまえば全てを否定されたような気持ちにさせられることもありました。正直、後悔はたくさんあります。でも、それがシーズンだし、バスケットボールだし、大きく見ればそれが人生だと思います。しっかりと向き合って、自分なりに答えをまた見付けていって、もう少し時間が経って冷静になったら、また振り返りたいと思います」
来シーズンでキングスの指揮官として計8シーズン目に入る桶谷HCも、苦しいシーズンを以下のように総括した。
「選手たちが投げ出すのではなく、最後の最後まで自分たちらしく、自分たちができること、コントロールできることを頑張って見付けようとしてくれました。キングスらしくやり続けてくれたからこそ、ファイナルまで来ることができたんじゃないかなと思います」
RSで紆余曲折を辿りながらも、打開する道を模索し続け、CSに入ってチームが持つ力を存分に発揮したキングス。6月1日に沖縄市のコザゲート通りで行われたシーズン報告会で、締めの挨拶を任された岸本は1万8千人(主催者発表)のファンを前に力強く言った。
「本当に長いシーズンで、みんなで苦しい時も、一緒に喜びを分かち合った時もかけがえのない時間になりました。それぞれが前を向いて、また目標に向かって前進していけたらと思います。また、誠意を持って、皆さんの前でプレーできる日を楽しみにしています」
どんなに高い壁が立ちはだかろうとも、目の前の課題から目を逸らさず、正しい道を模索し続ける。すぐに成果は出ないかもしれない。それでも、誠意を持って、プレーし続ける。人事を尽くし、その先の結果は「なんくるないさ」。
岸本が口にした、沖縄の人たちに脈々と受け継がれるこの精神性こそが、キングスのカルチャーの根幹を支えているのではないだろうか。

OKITIVEで振り返る琉球ゴールデンキングス2023-2024シーズンの軌跡

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