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長嶺 真輝

長嶺 真輝

琉球ゴールデンキングス、悔しい準優勝も“カルチャー”はぶれず。岸本が口にした「まくとぅ…」の精神貫く

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2023-24シーズン報告会で、集結したファンと一緒に記念撮影する琉球ゴールデンキングスのメンバー=6月1日、沖縄市のコザゲート通り(長嶺真輝撮影)

激動のシーズンが終わった。

プロバスケットボールBリーグの琉球ゴールデンキングスは5月25〜28日、横浜アリーナで行われた2戦先勝方式の2023-24シーズンチャンピオンシップ(CS)ファイナルに挑み、広島ドラゴンフライズに1勝2敗で敗れて準優勝。クラブ初の2連覇には、あと一歩届かなかった。

開幕前からの負傷者続出、東アジアスーパーリーグ(EASL)出場に伴う過密日程、天皇杯決勝での歴史的大敗、レギュラーシーズン(RS)最終盤に名古屋ダイヤモンドドルフィンズに逆転されての西地区連覇のストップ…。

ファイナル終了後、主将5シーズン目となった田代直希が「今年はかなり厳しいシーズンで、正直苦しい時間の方が長かったです」と振り返ったように、多くの壁が立ちはだかった今季。それらを乗り越え、歴代最長タイとなる3大会連続のファイナル進出を果たしたことは、賞賛に値する結果だろう。EASLと天皇杯を合わせ、昨年10月からの8カ月間でリーグで最も多い77試合を戦い抜き、ファンを熱狂させた。

昨シーズンの初優勝後、筆者が桶谷大HCに自身のキャリアについてインタビューをした際、以下のようなコメントをしていた。

「プロリーグで毎年勝つこと(優勝すること)は難しいです。経済的な側面やモチベーションも関わるので。でも、勝率6割以上を目指しながら高いスタンダードを保つことはできる。毎年優勝争いをすることができるチーム作り。それがキングスのカルチャーなのかなと思ったんです」

クラブの草創期である2008〜12年に自身が1度目のキングスHCを務め、Bリーグの前身の一つであるbjリーグで優勝2回、準優勝1回、3位1回という結果を残した時の振り返り、という話題の中で出てきた言葉である。稀に見る苦しいシーズンとなったプロリーグ参入17年目の今季も、キングスは積み上げてきた“カルチャー”をぶれずに貫いたのだ。

桶谷HC「なかなか形が作れなかったシーズン」

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ファイナルで指揮を執る桶谷大HC©琉球ゴールデンキングス

西地区2位で終えた今季のRSの通算成績は、41勝19敗。昨シーズンから勝ち星を七つ減らしたが、大きく勝ち越したことに変わりはない。勝率は6割8分3厘。数字だけを見れば上々の結果だろう。ただ、その経過の中では多くの試練が立ちはだかった。

チームの大黒柱であるジャック・クーリーが負傷離脱したまま開幕を迎え、その後もヴィック・ローやアレン・ダーラムなど主力が不在の時期もあった。ただでさえ、離島県が本拠地でアウェー戦は全て飛行機移動という不利性を抱えている中、連戦の合間の水曜に海外で行われるEASLのアウェー戦に臨むこともあり、コンディション調整や練習でチームの成熟度を上げるという作業もままならなかった。今年3月の天皇杯決勝での大敗も含め、RS終盤までモヤモヤした状況が続いた。

ファイナル第3戦後、桶谷HCも「シーズンのスタートでジャックがいなかったり、ヴィックも欠場したりする時期があったりして、起点を誰にするかということをシーズン中にずっと繰り返し、繰り返しやってきました。なかなか自分たちの形というのを作れないシーズンでした」と振り返った。
 
CSのトーナメント表はキングスを含め、今季EASLと天皇杯の2冠王者となった千葉ジェッツ(千葉J)、いずれもRSの勝率が8割以上に達した宇都宮ブレックス、アルバルク東京(A東京)という歴代王者が揃い踏みした険しい山に入ることとなり、キングスの下馬評は決して高くはなかった。

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