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発達障害があるこども達がジャグリングで大きく成長 苦手を克服してステージへ

大道芸やサーカスで披露される技の一つ・ジャグリングを、自閉スペクトラム症候群など発達に特性を持つ子どもたちに教える福祉事業所・Racucuru(ラククル)。
子どもたちの力を信じ、可能性を引き出す取り組みを取材した。
エンターテインメント×福祉で生まれた子どもたちの居場所
2023年11月、ショッピングモールで開かれたイベントで見事なジャグリングを披露した子どもたち。
彼らには、自閉スペクトラム症候群などの発達の特性がある。

普段は話すことが苦手だったり、こだわりが強かったりと、人とのコミュニケーションがうまくとれない悩みを抱えている子たちが、懸命に技を繰り出した。
指導するのは、多機能型児童福祉サービス事業所「こども支援ハウスRacucuru」の代表を務める本橋健志さん。
実はおよそ30年間、「大道芸人けんぢ」として活動するプロのエンターテイナーだ。

自分の技術と経験を活かし、発達障害がある子どもやその家族の力になりたいと2021年、この福祉事業所を立ち上げた。
こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「覚えるのが早くて、できる子にそれを聞いたり、コミュニケーションが苦手な子がそこからいろんな子と話できるようにしているのを見るとうれしい」
エンターテインメントと福祉をかけあわせた小さな奇跡が、次々と生み出されている。

こども支援ハウス・Racucuru。沖縄市内に2カ所の施設を運営し、ジャグリングやアートなどの遊びを通して、児童生徒の発達を支援している。
自閉スペクトラム症候群の人は一般的に手先が不器用で、運動も苦手だと言われている。
けんぢさんがRacucuruの支援で力を入れているのは、「ビジョントレーニング」。

見る力を発達させることで物理的な距離感が掴めるようになり、それがコミュニケーション能力の向上にも繋がると考えている。
こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「この距離でボールが掴める、この力でこの高さが投げられるんだという距離感を掴める。そうすると声の大きさが変わったりします」
誰かを楽しませたという気持ちが大きな成長へ
好きなことに熱中し、とことん打ち込むことができるのも、この子たちの特性。
Racucuruでジャグリングに出会った民島愛翔くんは、技を一つひとつ増やしながら、自信を付けてきた。

愛翔くんの母 民島広乃さん
「いままでは、人とのコミュニケーションが全然取れなかったり、初対面はほとんどしゃべれなかったです。『大道芸を人に見せたい、教えたい』ということで道具を持っていたら、人と話ができます」
Racucuruに通うようになって2年。今もジャグリングに夢中な愛翔くん。
しかしこの日は、どうやら学校で嫌なことがあったようだ。
愛翔くんの母 民島広乃さん
「学校でお兄ちゃんとすごい兄弟げんかをしたみたい。本人に聞くと、人生初めての怒りだったと」

こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「きょうはドーム(遊び)だし、もう思いっきり体を動かしてもらえば」
愛翔くんの母 民島広乃さん
「最近おうちでも私のいないところでかんしゃくが多いので」
こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「ほかの職員にも共有してやっていきましょうね」

こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「今日は(2か所の施設の)合同です」
Racucuruでは家庭や学校での様子を保護者から聞き、その子に合わせて活動内容を考える。
子どもたちに「楽しい気持ち」を感じてほしい。
それは長年、けんぢさんが大道芸人としてお客さんに届けてきたものと同じ。

こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「『学校終わってRacucuru行きたいな』とか、何やったの?と聞いても『わからん!楽しかった~』というぐらいでいいのかなと。楽しかったという声をいっぱい聞きたいと思っています」
何度失敗しても大丈夫!
これまでの成果を披露する楽来(らくくる)祭は、買い物客が行き交うショッピングモールの広場で開かれた。

ステージに出る機会が増えたメンバーも、本番の緊張の中ではすぐに技が決まらないことも。
こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「よく見て、よく見て」

お客さん
「がんばれー」
けんぢさんは、「落としたことが失敗ではない。その次にできればそれは失敗じゃなくてフリになる。全部が彼にとっての演出だ」と話す。
そして、いよいよ愛翔くんの出番。

こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「毎回同じ技ではなくて新しい技をやろうとしているので、ドキドキ度はあがっているのではないかと思います」
愛翔くんの母 民島広乃さん
「だいぶ成長したと思う。新しい技はおうちでできるけど、外ではやりたくないという子だったが、今回初めてできました」

Q.うまくできた?
民島愛翔くん
「いつもよりは」
愛翔くんの母 民島広乃さん
「いつもよりは上手くできたそうです」
Q.100点満点のうち何点?
民島愛翔くん
「82点」
ジャグリングを発達支援に活かしたいと手探りで始めた事業は、子どもたちの成長によって手ごたえを感じられるようになった。
こども支援ハウスRacucuru 本橋健志 代表
「まずは子どもたちが表に出る環境をこれからも作っていく。子どもたちに求められれば、自分たちは思いきり全力でやる、それだけかなと思っています」

Racucuruに通う子はこの一年で2倍に増えて、愛翔くんたちはRacucuruジャグラーを率いる一座となり、それに続く二座、三座の子たちの憧れの存在となっている。
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