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感謝の気持ちを綴った「アンマー」は崖っぷちのバンドを救った【OKINAWA SONG BOOK~沖縄歌集~『かりゆし58篇』 】
連載企画「OKINAWA SONG BOOK~沖縄歌集~」
沖縄県内のみならず、日本全国で愛される沖縄の歌(ウチナーソング)。
名曲が誕生する背景には、その時々の世相が密接に関係しているといいます。
この企画では、誰もが知っている【一曲の沖縄の歌(ウチナーソング)】をテーマに、歌詞に込められた思いや制作秘話などを紹介しています。

今回は、母親への愛・感謝の思いを、飾らない言葉で歌う1曲、かりゆし58の「アンマー」です。
日本有線大賞も受賞した、多くの人に愛される名曲にまつわるエピソードやかりゆし58が歩んできた17年間を振り返ります。

前川真悟
「(「アンマー」について)自分の経験というのはあるんですけど、みんなの中にある普遍的な場面の描写だと思う。
僕が歌ったら僕の脳裏には母が浮かぶけれど「アンマー」って曲はそれぞれの、色んな人のものになったらいいなと思います。」

中村洋貴
「やっぱ男の子ってお母さんに迷惑かけるじゃないですか。言われましたよ。お前の事かって。笑」

新屋行裕
「アンマーで色んな人が応援してくれた。周りの親戚とか友達とか。ちゃんと音楽やってるんだなって切り替わったと思います。」

地元の仲間で結成された「かりゆし58」。
実は「アンマー」がリリースされる前、デビュー作品となったミニアルバムの売上げが伸びず、事務所から契約解除を伝えられ解散の危機を迎えていました。
契約を継続する条件として事務所が出したのが「次で必ずヒット曲を出す」事でした。

前川真悟
「売り上げがきついから「次ダメだったらスイマセン」みたいな事を言われて。
最初のツアーでいろんな体験をするんだけど、俺なんかは余命宣告を受けたみたいな状況だったんですよ。」
崖っぷちに追い込まれていた前川さん。
アーティストとしての人生に悔いを残すまいと、ある思いを歌詞にしました。

前川真悟
「最後のチャンスになるんだったら、自分の一番近い人にありがとうの置手紙みたいなものを書いて、良いも悪いも無く、残せたという事で価値にしようかと。」
感謝の手紙を書くように母親への愛情を綴った「うた」は、人々の共感を呼び全国で話題となりました。
前川真悟
「「アンマー」って曲は結果的に僕らを音楽人にしてくれた。首を繋げてくれたって存在もあるけれど、向き合い方って言うんですかね・・・自分の中で何か生み出そう、書き出そうと焦っていたときより、自分の周りの人と、自分の周りで起こった出来事をスケッチするまでに、こんなに感覚が違うんだ、みたいな事も教えてくれた存在ですね。」
アンマーのヒットともに多くの人の前で演奏する機会が増えましたが、戸惑いもあったといいます。

前川真悟
「その曲に皆が耳傾けてくれたり、足運んでくれたりするようになったら、そこから恥ずかしさ。自分のなにかを見られている、見せているような事が恥ずかしかったんですよ。恥ずかし過ぎて歌詞が飛んだりしました。」
その前川さんの気持ちを晴らすきっかけがありました。
それは、今も多くの若いアーティストに影響を与えている琉球民謡唄者の重鎮知名定男さんとの会話でのこと。
前川真悟
「知名定男さんに「あの曲は良い曲だね」って言われて。「いやいや、あんなもの」って。「ガキが若いころに書いてしまった拙い曲で」なんて言って。「曲はお前とか俺が作ってるんじゃないよ。産まれて来る曲を助産する仕事、蘇生させる仕事をしてるんだ」って話してくれた時に腑に落ちて。」
知名定男
「真悟(しんご)は根はものすごい真面目な男だからね。誘われるかのようにそういう話をしてしまうんですよ。笑」

知名定男
「根底にはやっぱり島唄があったんじゃないのかなという気はしますね。
唄は自然に対する祈り、願いが根本にあるんですよ。「自然が唄を産む」という言い方をするんですけど。頂き物だと。かつて反映していた祈りの歌、村々に伝統的に残っていた歌が新しい形で蘇る。いわゆる「蘇生」みたいな気分を持っている。」

前川真悟
「それが実現できているかわからないけど、おまじないとして、「あの歌は俺が作ったものではなくて、誰かに届くべきだったものを俺が届け手として仲介した」って思うと楽になって。「あの曲良いね」と言われたら「そうなんですよ。こいつ可愛いんですよ」って俺も言えるようになった。」
デビューから17年。かりゆし58は「歌」を生み続けています。
宮平直樹
「何年も経って自分たちも、実際親になったりとかしていて、またちょっと見方が親目線も分かるようになったりした上で、人生を考える上では大事な曲だなって。改めて年数重ねるごとに思うようになってきた。」

前川真悟
「暮らしの歌を歌いたいというか、暮らしの中でしっくりくる歌、届くところまでちゃんと押し出すというか。それがライブの醍醐味なんですけど、知っているはずの17年前に誕生した曲の一番新しく上書きされた声と演奏なので、それを自分の人生で一番新しい瞬間と重ねて、そこにいてくれるから人は。「ライブしましょう」という所です。」

人々の暮らしの中にある、家族への愛情。
真っ直ぐに綴られた言葉を歌にのせ、多くの人に届けます。
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OKINAWA SONG BOOK 2023
特別番組「OKINAWA SONG BOOK2023」
2023年12月19日(火)19時00分から沖縄県内のテレビ8チャンネルにて放送!
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