文化
島を想い唄い続ける~東京・神田で三線教室を開く伊良皆高吉さん~

精力的にLIVEを行う85歳!

東京都杉並区高円寺にある沖縄居酒屋「抱瓶」。この日はお店で生LIVEが開かれることもあって、多くの沖縄ファンでにぎわった。唄者の名は石垣市出身の伊良皆高吉さん。「鷲ぬ鳥節」をはじめ八重山古典民謡の曲で聴衆を魅了した。




65歳で上京し、三線教室を開催

伊良皆高吉さん(85)
「大自然に敬意を払いながら、誇り高く歌うのが八重山の唄」
御年85歳にも関わらず、エネルギッシュな伊良皆さん。東京・神田を中心に三線教室を主宰するかたわら、演奏会をこなしている。
伊良皆高吉さん(85)
「石垣島では子どものころから、山で採った薪を売って家族の生活を支えていたから、足腰は丈夫だよ」
穏やかな表情で話す85歳の唄者は今、ある目的に信念を燃やしている。
「祐清丸」沈没事故の犠牲者を偲ぶ

戦後、高校卒業した伊良皆さんは与那国島で「代用教員」として働いた。
「代用教員」とは先の大戦で多くの教員が犠牲になったことから、戦後の教員不足を補う措置として設けられたそうだ。
第二の故郷と呼ぶべき島で伊良皆さんが教鞭を振るうなか、1957年、石垣島と与那国島を結ぶ荷客船「祐清丸」が沈没する事故が起きた。乗客としてこの船に乗っていた伊良皆さんは運よく難を逃れることができたが、乗員乗客28人が犠牲となった。
伊良皆高吉さん(85)
「犠牲者の多くが与那国島の人だった。遺留品の一つも見つからなかった行方不明者もいて、胸が張り裂けんばかりの気持ち」
島で生きる人にとって忘れることができない海難事故から66年。生存者の一人として伊良皆さんは与那国島に犠牲者の魂を慰めるための慰霊碑を建立したいと願っている。精力的にチャリティーLIVEを行うのも資金造成のためだ。


島を想い唄い続ける


高円寺「抱瓶」でのチャリティーLIVEで伊良皆さんは「かたみ節」や「目出度節」、「与那国小唄」など、八重山古典音楽を中心に披露し、聴衆をうならせた。
音楽のジャンルを問わず多くのミュージシャンに舞台を提供している「抱瓶」代表の高橋貫太郎さんは、『85歳でバリバリ演奏してスゴイよね』と三板を鳴らしながら、ともに会場を盛り上げていた。

伊良皆高吉さん(85)
「与那国島に慰霊碑を建立するにはあと2年ぐらいはチャリティーLIVEをやらないといけない」
笑顔いっぱいに話す85歳の唄者、島を想いながら、今日も誇り高く唄を紡いでいる。

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