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「ハーリー魂」という伝統のバトンを受け継ぐ男たち

沖縄各地で発展を遂げた「ハーリー」。
その中でも最大級の行事として位置付けられる「那覇ハーリー」。
見どころは「那覇」「久米」「泊」の伝統衣装を身にまとった男たちが海の神様に航海安全や大漁祈願、地域の発展を祈願する「御願バーリー」。
そして3つの爬龍船による真剣勝負「本バーリー」だ。
古式にのっとった所作は、戦禍を潜り抜けながら、担い手たちによって受け継がれてきた。
『父も、祖父も、その前も、うちは代々ハーリーをやってきた』
そう話すのは「那覇爬龍船振興会」の監事を務める仲本興平(なかもと こうへい)さん。
那覇ハーリーを支えてきた「泊」の出身で、物心ついた時から、ハーリーに関わってきた1人だ。
ハーリー一家に生まれて

『仲本家のゴールデンウィークはいつも「那覇ハーリー」。祖父や父の背中に憧れ、小さいころからいつか自分も伝統衣装を着たいと、心を躍らせていた』と仲本興平さんは振り返る。



仲本さんは「泊ハーリー」の担い手として、「旗振り」役からスタート。
「漕ぎ手」、爬龍船の方向を決める「舵取り」、漕ぎ手のリズムを合わせる「鐘打ち」、さらには波に揺れる爬龍船の上で披露する「空手」の演武、さらそして熟練しかできないとされる「ハーリー歌」の歌い手としても経験を積んだ。
「那覇」「久米」「泊」で歌い継がれてきた「ハーリー歌」


「ハーリー歌」は、3つの地域による競漕「本バーリー」の前に行われる「御願バーリー」で「那覇」・「久米」・「泊」それぞれの歌い手によって披露される。
「楽譜」などは一切なく、いずれの地域も曲調を『口伝』で受け継がれてきたそうだ。
仲本興平さんの祖父・興徳さんは、お酒を飲んで気分がのってきたら、泊のハーリー歌を口ずさんでいたという事で、興平さんは聞き漏らさないよう、じっと耳を立てていたそうだ。

先祖から、地域の先輩達から受け継がれてきた、目にすることのできない「伝統」のバトン。
「那覇ハーリー」、そして「泊ハーリー」の担い手の1人として、仲本さんは子どもたちと一緒に大舞台に立つのが夢だ。

「ハーリーには安全祈願、豊漁祈願に加えて、『厄』を祓う意味もあると思う。」と仲本さんは強調する。
コロナ禍で2020年から3年開催が見送られてきた伝統行事「那覇ハーリー」。
来年こそはハーリー鐘の鳴り響く中、伝統を受け継ぐ担い手たちの勇壮な櫂捌きを見たい。
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